「これ…私に…?うれしい…!!」
「ありがとう、勇者くん」
「ねぇ勇者くん、今日この後は私の部屋で…」
「え?勇者くん、どこか行くの?」
魔法使いちゃんが、何かを凝視している。
どうやら背後の荷物が気になるようだ。
「勇者くん、このホワイトデーのプレゼント…他にもあるみたいだけど…何かに使うの?」
結論ありきの質問を、彼女は問いかけてくる。
「私はもう貰ったわけだし…いらないよね、これ」
──そして、彼女はゆっくりと微笑んだ。
「だめだよ、勇者くん。持ち運ぶ荷物はちゃんと考えないと」

たろきちのHPだよ
「魔物退治、がんばってね!」
先日仲良くなった、この村の少女。
母親と2人でこの村で暮らしているらしい。
「はい、これ!お守り!」
「みんなを守ってね!」
小さな手のひらから渡された四つ葉のクローバー。
それを握りしめながら。
魔物の拠点に足を踏み込む。
「っ…!!」
「ふはははは!勇者くん!かかったな!」
高笑いするのはこの山の魔物を束ねるヘビ首領。
「お前等がここに来ている間に、私の部下を村に放った!」
!!
魔物のアジトは山の奥深い。
ここから村までは走っても1時間はかかるだろう。
「くくく…今頃村は火の海に…ん?なんだ?」
ぱたぱたと、ヘビ首領の元に音を鳴らしながら飛んでくる物体。
「今取り込み中だ…せっかくいいところなのに…えっ?」
どうやら使い魔からの通信らしい。
「村に入れない…?」
「はいよ、山菜ラーメンおまち!」
ガハハ、と豪快に笑いながら接客をする女性。
この宿屋を1人で切り盛りしている女店主だ。
特に理由もないが、今日も綺麗ですねと褒めてみた。
「あらやだ勇者くんったら、こんなオバサンにお世辞だなんて」
店主は、豪快に笑いながらドリンクをおまけしてくれた。
その夜──。
コンコン、とドアを叩く音がする。
──誰だろうか。
魔法使いちゃんでないことは確かだ。
彼女なら、ノックなんかしないで入ってくるだろう。
お姫さまか…?
いや、彼女ならそれどころか──あらかじめ布団に入り込んでくるはず。
元・魔王もこの時間ならもう寝ているはずだ。
おそるおそるドアを開ける。
──そこにいたのは、宿屋の女店主だった。
「勇者くん…昔の…主人に似てるのよね…」