異世界夢想見聞録

「はいよ、山菜ラーメンおまち!」

 

ガハハ、と豪快に笑いながら接客をする女性。

この宿屋を1人で切り盛りしている女店主だ。

 

特に理由もないが、今日も綺麗ですねと褒めてみた。

 

「あらやだ勇者くんったら、こんなオバサンにお世辞だなんて」

 

店主は、豪快に笑いながらドリンクをおまけしてくれた。

 

その夜──。

 

コンコン、とドアを叩く音がする。

 

──誰だろうか。

 

魔法使いちゃんでないことは確かだ。

彼女なら、ノックなんかしないで入ってくるだろう。

 

お姫さまか…?

いや、彼女ならそれどころか──あらかじめ布団に入り込んでくるはず。

元・魔王もこの時間ならもう寝ているはずだ。

 

おそるおそるドアを開ける。

 

──そこにいたのは、宿屋の女店主だった。

 

「勇者くん…昔の…主人に似てるのよね…」

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