異世界夢想見聞録

「勇者くん、こちらをどうぞ」

 

お姫さまから受け取ったのは、チョコレート。

どうやらこの世界でもバレンタインはあるらしい。

 

「ねぇ、勇者くん。今日は何の日か、知ってる?」

 

なにやらご機嫌な魔法使いちゃん。

そして、その手にあるもの。

ハート型のそれは推定ほぼチョコレートだろう。

 

「あれ?勇者くん、その荷物はなに?」

 

…!!

 

魔法使いちゃんの目は笑っている。

──しかし。

 

「そうだよね、勇者くんには私がいるのに」

 

「私以外から貰ってるわけないもんね?」

isekai_250210ft_002

おねえちゃん島

「今日からここが、君の住むおうちよ」

 

お姉さんに手を引かれて。

ぼくは新しく住む家の門をくぐった。

 

よくわからないけど、少子化…?とかいうので、最近は子供の数が激減しちゃったらしくて。

特に男の子の数が凄く少なくて、ぼくも同級生の男子はぼく以外に1人しかいなかったんだ。

 

だから男の子は、一定の歳になると親元を離れて、女の人の家に住まなきゃいけないんだって。…なんでだろう?

 

「私のことは、おねえちゃんって呼んでくれると嬉しいな」

お姉さんは、ぼくに目線をあわせながら優しく微笑んだ。

 

「弟くんって呼んでいい?」

「私ね、弟がずっと欲しかったの」

 

姉乃えおねさん。

今日からこの人と、ぼくは一緒のおうちで生活する。

 

えおねさん…じゃなかった。

おねえちゃんはとても優しかった。

 

親と離れてちょっと不安だったけど。

これなら、なんとかやっていけそう!

 

 

おまけはfantiaに置いてます!よろしくね!↓の画像から飛べるよ!

oneane_250207ft_002

 

彼女の好きと僕の好き

今日はバレンタイン

まったく迷惑な恒例行事だ。

そんな僕の考えと裏腹に、世間ではチョコレートの流通が加速していく。

 

ちなみに自慢ではないが今まで僕はバレンタインチョコを貰ったことは一度もない。

…周りがチョコを貰う中、ひとり惨めな気持ちを何度味わったことか。

 

だが、今年は違う。

僕はあることに気付いた。

 

チョコを貰えないんじゃない。

──チョコを、”貰わない”。

 

バレンタイン回避法。

──実戦の時が、来た。

kanosuki_250208ft_002